読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

いつかのお買い上げ本。

年末進行の忙しさのなかで、時間を見つけては本屋さんにいって、積読の山の高度を上げつづけておりました。

ということで、いつかのお買い上げ本。

 

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●『ずっと独身でいるつもり?』KKベストセラーズ

 

●『東京を生きる』大和書房

●『女の子よ銃を取れ』ポット出版

●『自身のない部屋へようこそ』ワニブックス

●『まじめに生きるって損ですか?』ポット出版

 

計5冊。

すべて先日亡くなった雨宮まみさんの著作です。

おそらく彼女が亡くならなければ、その著作を手に取ることはなかったと思います。

なぜなら、私は"弱者"とカテゴライズされるような人たちテーマにした創作物でお金儲けをしている匂いがする方の作品に、お金をびた一文も払いたくないと思っているからです。

 

雨宮さんが注目を集めるきっかけになったのは『女子をこじらせて』という作品。

女性としての自分に自信がもてなかったり、肯定的に思えなかったり、女性に生まれたがゆえの社会から受ける扱いに悶々とした思いを抱えていたり……。

さまざまな理由で女性としての自分をこじらせている人に向けた強烈なメッセージブックとして、当時は扱われていました。

 

そんな世間の評価を耳にして

「女性である自分と向き合うことすら苦しい人だっているのに、そういう人の気持ちに寄り添うふりをして、お金儲けをしようとしている人」

というレッテルを雨宮まみさんに貼りつけて、著作を読もうともしなかったのです。

 

でも、雨宮さんがお亡くなりになって今後作品が出ないということは、私のなかの雨宮まみさんに対する認識を覆す機会はなくなってしまったということになります。

著作も読まずにあれこれ言うわけにはいかないという理由から、先日『女子をこじらせて』を読んだのです。

 

読んでみて、私が著作も読まずに雨宮まみさんに貼りつけたレッテルは間違っていたことに気づきました。

そして、彼女の書く、他社と理解しあいたいと渇望すること、でも理解し合えないという諦め、自分で自分に対して抱く期待と裏切られた悲しみなどなどに打ちのめされたのです。

これは苦しむ人に寄り添う振りをしてお金儲けをする輩とは大違い。

どうして今まで、避けてきてしまったんだろうと大きな後悔に襲われました。

 

だから、雨宮まみさんの著作大人買い

死を悼むとかそういうことではなく、純粋に雨宮まみさんという書き手を知るためのお買い上げです。

 

どうして年明け早々、本屋さんに最新号の雑誌が並んでいるのか。

 出版業界には、“年末進行”というのがありまして、師走になりお経をあげるために、東西を馳せる師匠の僧と同じくらい、いいえ、もしかしたらそれ以上、関係者は忙しい日々を過ごすことになります。

 

「年末進行ってなに?」という方にご説明しましょう。

年末年始のお休みがおわって、仕事始めのころに本屋さんに行くと、雑誌コーナーには年明け後に秦奪いとなった最新号が並んでいると思います。

雑誌を印刷して、本の形に製本してくれる印刷所や製本所は、年末年始は当然休業です。

できあがった本や雑誌を書店さんに流通させてくれる、トーハンや日版さんのような取り次ぎさんもお休みです。

だから、年明け早々に書店に並んでいる本は、印刷所や取次ぎさんがお休みになるまえに、本にしておかなければ、読者の方たちのもとに届けられないということです。

年末年始休業は約1週間くらいでしょうか。

本や雑誌にかかわる人たちは、そのお休みの分、進行スケジュールを思いっきり前倒しして、下手すると2号を同時並行するような状況で仕事をすることになる……。

というのが、年末進行です。

これは、年末だけではなく、ゴールデンウィーク、お盆、シルバーウィークなど、カレンダーに赤い数字が並ぶと起きるもの。

「連休、やったー!」

と純粋に喜べないのが、出版関係者の悲しい性なのです。

 

そんなこんなで、ブログの更新ができないくらい“年末進行”にずっぽりとはまっています。

ただ、どんなに忙しくても本屋さんに行って、本を買うことをやめられないのは変わりません。

どんなに忙しくても、山積みになった本を引っ張り出しては、たとえ数行であっても読書の時間を作るのも変わりません。

 

数日だけですが、年末進行の沼から息継ぎのため顔を出せるくらいの余裕が出てきたので、ブログ更新してみました。

どんなに忙しくても散財した本のあれこれは、また夜にでも……。

BOOK011 『お皿監視人』 ハンス・ツィッパート

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ミヒャエル・ゾーヴァの絵にひかれて手にしたのだけれど、思いのほかお話も楽しくて、何度も読み直している作品です。

お天気は人々が出された食事を残すか、きれいに食べ切るかで決まっているという設定の物語。

そんなお天気とご飯の因果関係を逆手に取ったビジネスをはじめた「お天気マフィア」と、マフィアのからくりを見抜いた子供たちとの戦いを描きます。

お天気マフィアと闘う子供たちがいわゆる絵本に出てくるような無垢なキャラではなく小生意気だったり、ブラックコメディの話の展開は、かなりわたし好みでした。

 

お皿に食べ物を残すか、残さないか、それを管理しコントロールすれば、農作物の出来はもちろんのこと、公害を引き起こすこともできてしまうわけですから、とても怖いお話。

たとえば日本なら、食べ放題のお店ばかりを流行らせて食べ残しを激動させることで、雪に弱い東京にずっと雪を降らせればいい。

首都機能はマヒして……、とういう可能性だってありえるわけです。

日本は四季があって、作物が育つには恵まれた環境にあるから鈍感になりがち(特に、雪や雨や、猛暑の被害が日本の中でも少ない東京で生まれ育った私は特に)だけれど、お天気は穏やかな生活のために必要不可欠なものなのです。

 

ああ、今日も雨か……、もういい加減寒いのはイヤ! と毎日、朝目が覚めて窓を開けるたびに文句を言ってばかりの生活をちょっと見直したくなります。

玄関に置かれた火鉢。

編集や執筆の仕事をしていると、パソコンの前でずっと調べ物をしたり、原稿を書いたり、資料を読んだりしている時間が多くなるので
日々、運動不足を感じます。

という訳で、今日は自宅から徒歩30分くらいのところにある亡き祖父母の家のあった街まで歩いて出かけてきました。

通っていた小学校までの通学路や好きだった男の子の家の前、商店街……。
記憶の中にある路地を歩きながら、変わった風景、変わらない風景に一喜一憂されられました。

祖父母の家が近づいてきて、私は立ち寄るか、ぐるりと遠回りをして、見ないで帰ってしまおうか、すごくすごく悩みました。
なぜなら、祖父母の家がいま、どうなっているのか、私は今日の今日まで知らなかったからです。

祖父が亡くなり、祖母がひとり残されたとき
幼い頃の思い出がたくさんつまった祖父母の家は売りに出されて、人の手に渡りました。
あまりにたくさんの思い出が詰まったあの家があの場所になかったら、仕方がないことだと分かっていてもすごく傷つくような気がします。
まるで、私の思い出まで、他人の手で壊されてしまったように感じてしまいそうで怖かった。

でも、本を読むのが大好きで、いつも穏やかな笑顔でそばにいてくれた祖母を思い出しながら
ゆっくりゆっくりと道を歩き、
「きっと、おばあちゃんなら、家がなくなっていたとしても
笑ってるわ、きっと」
と思い直して、行ってきました。

その場所にあったのは、あのときのままの家でした。
あの時と違うとしたら、とってもきれいに庭が手入れされていたこと。
一番大きかった真っ白な花をつけるこぶしの木は、あの頃より少し大きくなっているようでした。
そして、玄関の屋根の下あたりに大きな火鉢が置いてあったこと。
中を覗き込んだら、金魚が冷たい水の中を、すいすい泳いでいました。
見覚えのあるその火鉢は、おばあちゃんが庭に置いていたもの。
同じように、金魚を中で育てていたのです。

どんな方がこの家で暮らしているのか分からないけれど
「私たちの思い出がたくさん詰まったあれこれを
大事にしてくださってありがとうございました!」
と心の中で大きな声でお礼を言って、深く深く頭を下げて帰ってきました。

そして思ったのでした。
家があるとかないとか、風景が変わったとか変わらないとか、そういうことじゃないんだな、って。
思い出は、ちゃんと私の中にある。
だから、どんなに街が変わっても、どれだけ時間が経っても
大丈夫。

数日前のお買い上げ本。

木曜日の夜に勃発したトラブルが原因でバタバタしていたので、郵便物を開いたりする時間がなかったのですが、インターネットで注文していた本が届いていました。

なので、数日前のお買い上げ本ということになりますね。
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⚫「草獅子 vol1」双子のライオン堂

赤坂にある、ちょっと風変わりな本屋さんが創刊した文芸誌です。

芥川賞候補作にもなった今村夏子さんの「あひる」が収録されていた「たべるのがおそい」、震災に見舞われた熊本で誕生日した「アルテリ」もこの一年くらいで産声をあげたもの。

このところ、にわかに文芸誌まわりが活気づいています。

そんな流れのなかで本屋さんが作った文芸誌が、いよいよ創刊されたとなれば、手にとらないわけにはいきません。

こういう雑誌で執筆できるライターになりたいものです。

BOOK010 『雪だるまの雪子ちゃん』 江國香織

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54年ぶりに11月の東京に雪が降る、というニュースを聞き、読み返しました。

人が積もった雪で作ったた“人工的”な雪だるまではなく、“野生”の雪だるまの女の子、雪子ちゃんを主人公にしたお話です。

冒頭に出てくるこの野生の雪だるまという言葉に、読むたびにめろめろになってしまいます。

だって、雪だるまに、野生だなんて。

その着想、すごいと思いませんか?

 

野生の雪だるまの女の子が主人公なのはもとより、江國香織さんの筆致や山本容子さんの銅版画が相まって、全体としては絵本のような雰囲気。

でも、私にはこの本が子供向けの絵本のようには思えません。

なぜなら、四季や人間の生活を見つめる雪子ちゃんのまなざしは、子どもが大人の世界を見るそれととても似通っていて、大人である私たちこそ改めて気づかされることばかりだからです。

大人のお手本みたいな位置づけとして登場する、雪子ちゃんの一番親しい友人であり隣人の百合子さんを見る雪子ちゃんのまなざし、そして二人のやりとりは、身につまされます。

 

今日の雪はどうやら積もらないようですね。

この冬、あと何度雪が降るかわかりませんが、そのたびごとに読み直すことになる予感。

今日のいただき本。

お手伝いしている某女性誌の編集部には、書評ページに取り上げてもらおうといろいろな出版社から大量の本が送られてきます。

残念ながら書評で取り上げられなかった本は、

「ご自由にお持ちください」

というメモ紙の貼られた段ボール箱に入れられ、定期的に放出されるのが慣例です。

 

いつもスタートダッシュに乗り遅れて、お目当てのほんは誰かの手に渡ってしまうのですが、残りものには福があるもの。
今回の放出では、この2冊をいただきました。

 
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お金を出してかったものではありませんが、積ん読に仲間入りということで、今日のいただき本として記事にすることにしました。

 

⚫『グレース・ケリー モナコ公妃のファッションブック』青幻舎

美しきモナコ公国のプリンセス、グレース・ケリーのファッション、お気に入りのブランドや愛用のアクセサリーなどをカラー写真満載で紹介。

オードリー・ヘップバーンはじめ、品があってもとびきり美しく、どこかチャーミングな女性に惹かれる私にとって、グレース・ケリーは憧れです。

眼福な1冊。

 

⚫『魔女の12ヵ月』 飯島都陽子  山と渓谷社

別に魔女になりたいと思っているわけではありません。

ラベンダーの砂糖漬けやホタテのスパゲティ、パンプキンスープなどなど、おいしそうなレシピが載っているようだったので、レシピ本として勝つようするつもり。