BOOK010 『雪だるまの雪子ちゃん』 江國香織
54年ぶりに11月の東京に雪が降る、というニュースを聞き、読み返しました。
人が積もった雪で作ったた“人工的”な雪だるまではなく、“野生”の雪だるまの女の子、雪子ちゃんを主人公にしたお話です。
冒頭に出てくるこの野生の雪だるまという言葉に、読むたびにめろめろになってしまいます。
だって、雪だるまに、野生だなんて。
その着想、すごいと思いませんか?
野生の雪だるまの女の子が主人公なのはもとより、江國香織さんの筆致や山本容子さんの銅版画が相まって、全体としては絵本のような雰囲気。
でも、私にはこの本が子供向けの絵本のようには思えません。
なぜなら、四季や人間の生活を見つめる雪子ちゃんのまなざしは、子どもが大人の世界を見るそれととても似通っていて、大人である私たちこそ改めて気づかされることばかりだからです。
大人のお手本みたいな位置づけとして登場する、雪子ちゃんの一番親しい友人であり隣人の百合子さんを見る雪子ちゃんのまなざし、そして二人のやりとりは、身につまされます。
今日の雪はどうやら積もらないようですね。
この冬、あと何度雪が降るかわかりませんが、そのたびごとに読み直すことになる予感。