WORDS005 驕りゆく女と落ちていく男。
「かわいそうだたあ、惚れたってことよ」って映画の台詞にあったと思う。
『今日もやっぱり処女でした』 夏石鈴子著より抜粋
私もかつて、「この人、かわいそうだなあ」と思いながら、ある男性とお付き合いをしていたことがありました。
「こんなかわいそうな人、私がいなくなったら、どうするんだろう」
なんて、驕った考え方をして……。
でも、不思議なことに「かわいそうだな」と思っていると、相手にそれがなんとなく伝わってしまうようで、私の気持ちに甘えるようになった男は、もっともっとかわいそうな人、になっていったのです。
そのうちに、私は「かわいそうな、あの人」を見るのがつらくなってしまって、自分からその人の手を放すことを選びました。
今でも、私はとても残酷なことをしたのではないか、とふと彼のことが頭をよぎることがあります。
「かわいそう」と感じてしまうことたまにあるのなら、まだいいでしょう。
でも「かわいそう」だけになってしまったら、人は人を愛せない。