読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

WORDS004 キャリアウーマンになんて、なりたくなかった。

結婚せずにずーっと働いてると、仕事に生きる女だと思われる。

そんなことないです。食っていくために、働いているだけですよ。

みんな、そうでしょう。

「恋愛嫌い」平安寿子著より抜粋

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食べるには、お金が必要。

たまには、おしゃれがしたい。

だったらお金が必要。

ストレスがたまってきたら、お酒がのみたい。

だったら、お金が必要。

リフレッシュをかねて、どこかに行きたい。

だったら、お金が必要。

 

挙げたら切りがないくらい、生きるというこことは、お金がついて回ります。

だから、楽しいとか楽しくないとか、やりがいがあるとかないとかにまったく関係なく、生きるためのお金が必要だから、働かなければなりません。

 

ただそれだけの理由で、仕事をしているだけなのに、男と戦っている女のように私を扱うのはやめて。

そんな風に思っている、世の女性は、きっと少なくないはずです。

 

恋をするとか、結婚するとか、仕事で成功するとか、一人ひとりがさまざまな選択肢を選びとるのだけれど、目標は楽しく生きること、それだけ。

楽しく生きるためにお金が必要だから、男と同じように女も働いているのです。

だから別にキャリアウーマンになろうと思っていたわけでもないし、結婚に興味がないわけでもないのよ、私。

今日のお買い上げ本。

お仕事終わりに、東京駅近くOAZOのなかにある丸善でお買い物です。


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今日のお買い上げ本は2冊。

⚫『 世界のへんな肉』白石あづさ 新潮社刊

某編集部に書評用に送られて来ていたものを、パラパラ読んだらおもしろそうだったので、買うことにしました。

アルマジロのお肉って、どんな味なんだろう?

 

⚫『 狂う人』梯久美子 新潮社

夫の不倫に心乱され、狂気をはらんでいく作家、島尾ミホさんの評伝です。

恋とか愛とかなものに烈しい熱情を抱く人たちに、どうしても魅せられてしまう私。

買わないわけにはいきません。

 

図らずとも、どちらも新潮社刊行の本となりました。

あなたのカケラ。

かつて、のめり込むように読んでいた作家さん。
今でも新刊が出ればすぐに飛びつくように読んでいる作家さんもいれば、いつのまには読まなくなっていった作家さんもいます。
そして、「最近、新刊出ないな」と思っているうちに、数年が経ち、もう書くのを辞めてしまったのかなと
残念に思っている作家さんも……。

辻内智貴さんや小川内初枝さんは、そういう作家さんのひとりです。

夢を抱えながら、ビルの窓の清掃員として働く男性たちのまっすぐで、孤独で、でもあたたかい物語『青空のルーレット』や地方にあるドライブインを営む男性が生きるとは、人生とはと真正面から向き合う姿、そしてそこに集まる人々の抱える思いを描いた『セイジ』。

辻内さんの作品を何度も何度も読み直しながら、こんな人の気持ちをざわりとさせる小説に関わる文芸編集者になるぞと、涙を流したものでした。

好きすぎて苦しくなって、身動きが取れなくなるような辛い恋をしていた頃によく読んでいたのが小川内初枝さんの作品。
一緒にいるのに独りぼっちになったような感覚にとらわれる女性の気持ちが見事に描かれた「恋愛迷子」など、恋に落ちてしまった女が抱える闇と光と、自分でもどうにもできない混乱や混沌を描く小川内さんの言葉は、いつも私に優しく寄り添ってくれました。

もう作家としての活動は少なくなっているかもしれないけれど、いまここに、こうしている私のなかには、間違いなく、あなたの言葉と物語は存在しつづけています。
あなたのカケラが、いまの私を作っているのです。
作品が発表されなくなってしまっているのには、なにか理由があるのだと思います。
それでもあなたが書いた物語の痕跡は、私のような読者にしっかり残っている……。

ふとした瞬間に、お二人以外だけではなく、書かなくなった作家さんを思いだすといつも、そんな風に思うのです。

WORDS003 男を選ぶ基準。

自分のことしか愛せない人とつきあうなんて、そこまで頭悪くない。

『千年の祈り』イーユン・リーより抜粋

 

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付き合う男、結婚する男、をめぐって女たちはそれぞれ、理想や譲れないポイントを決めているものです。

なかでも、この「自分のことしか愛せない男」というのは、女を幸せにできない男の典型だと私は思っています。

 

なぜなら、かつて「自分のことしか愛せない男」の典型のような人と付き合って、さんざんな思いをしたことがあるから。

 

でもこれは、男だけにあてはなるのではなく、女も同じです。

自分のことしか愛せない女は男を不幸にします。

 

だから、私も「自分のことしか愛せないような女」にはなりたくないし、「自分のことしか愛せない男」を選ぶような女には絶対、ならない。

 

BOOK008 『十階 短歌日記2007』 東直子

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この本を手にしたのは、東日本大震災の直後のことでした。
地震の後、日常を取り戻せず、本を読むことに意識的になることができずにいた数日の間の私を救った本が、2冊ありました。

その2冊のうちの1冊が、この『十階 短歌日記2007』です。

3月11日の地震の日まで、私はこの本をいつでも手の届くリビングの棚の上に置いていて朝目覚めたときと眠りに着く前に、2007年の東さんの日々を1日1ページ、つまり短歌一首と、それに添えられた日々の生活を切り取った短い文章をじっくりと味わうように読んでいました。
朝ページを開くときには「私の今日は、どんな1日になるのだろう」と期待感を持って、
眠りに着く前は「私の今日は、こんな1日でした」とその日をかみしめるようにしていました。
不思議なことに、朝と夜とでは、同じ短歌、同じ文章も違った色合いが生まれて、その違いを感じることも楽しみの一つとなっていたのです。

ところが、地震が起きてから、私は自分の日常を失ったような感覚に苛まれるようになりました。
もう、これまでみたいに1日を過ごすことはできないし、どうやって過ごしたらいいのかわからない……という感覚がどんどん大きくなっていきます。
このままでは、自分で自分自身を壊してしまうと感じたとき、ふとこの『十階 短歌日記2007』が目に入り、読むのをやめていた数日分を一度に読み出しました。
しずかに、しずかに、ただ黙々と読み続け、そして止まらなくなったのです。

日常って、決して特別なことじゃなく、特別なことを意識して作られるものではなく、
そこにあるものである、と読み進めるたびに、私は思いだしていました。

自分の意志だけじゃなく、たくさんの生物(人間だけじゃなく)、や風、雨、太陽、
それらが奏でる音によって支えられ、作られているものなのだから、私が躍起になって取り戻そうとしなくても、今、こうしていることが生活であり、日常なんだ。
自分だけが、日常を見失い、迷っていると思い込んでいて、それを自力でなんとかしなくちゃいけないと思いこむなんて、おこがましい。

目の前で起きることに目を見開いて、かかわって、反応していけば、それが日常になるんだ。
私は日常を失ってなんかいなかったんだ。
本を閉じたとき、そう強く確信しました。

どんなにダメな自分のときも、全てを失ったように思える時も、1日は始まり、終わりを迎えます。
終わりを迎えた1日が積み重なって、日常、生活が作られていきます。
そして、新たな1日は、私に生きることを、生活することを求めます。
こうして、私の日常は続いていくのです。
そして、私の日常が私を作っていく……。

私は、1冊の本のおかげで、見失った自分自身を取り戻すことができました。
自分自身を取り戻した私は、また本を読み、日常を積み重ねて、毎日自分を更新していくのです。

そんな風にして、今の私も、できています。

今日のお買い上げ本。

買う本のほとんどは自分が読みたくて買う本ですが、読む本のほとんどは仕事の資料でてす。

時間は限られています。

読まなくてはならないお仕事本を優先せざるを得なくて、読みたくて買った本はなかなか手を付けられません。

 

とはいっても、仕事のために読んだはずなのにすっかり魅せられて、その後もその著者の方の作品を読み続けてしまうなんてこともあったりするから、おもしろいのです。

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今日のお買い上げ本は、仕事の参考資料です。

『楽しく、貯まる「づんの家計簿」書きたくなるお金ノート」

づん著 ぴあ刊

資料として読む本ですが、いいご縁になりますように……。

BOOK007  『聞き出す力』 吉田豪

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著者の吉田豪さんと言えば、アイドルやタレント、格闘家などにインタビューをしている「プロインタビュアー」。
その取材相手の数は1000人以上と言われています。
本書は、時に「本人よりも本人に詳しい」といわれる綿密な下調べをもとに構成する吉田さん流の取材を通じて、「今まで語られてない話を聞きだしたり」「誰も聞けない、本人も言いにくい話を聞きだしたり」してきたエピソードをつづっています。

「プロインタビュアー」とまでいかなくても、これでも一応、政治家、芸能人、文化人から市井の人々(90歳のおばあちゃまとか)まで取材をしてきた編集・執筆業を営む人間のはしくれとして、読んでおかなくちゃと思い手を伸ばしました。

インタビューにもいろいろあります。
本当にいろいろあるんだなぁ。

吉田さんのインタビューはきっと相手と闘っているのだと思います。
まさにタイトル通り「聞き出す力」を駆使する側と聞きだされて堪るかと思っている人間のせめぎ合い。

今でこそ女性のライフスタイルものを中心に編集、執筆をしている私ですが、ある時期、水着なんて当り前! 肌の露出が多いお姉さんたちのグラビアページがあるような男性週刊誌で記者をしていた時期もありました。
その時は、まさに

「他誌では話していない話を聞き出さなくちゃ」

「最近ちょっと騒がれたあのネタを振らなくちゃ」

というような取材ばかり。

そのたびに「人の話を聞くのはとても好きだけれど、こういうやり方は肌に合わないような気がする」と思っていたものでした。

そして私が行き着いたのが、いまの「おもしろがる」「よりそう」という聞き方。
もちろん、時には(男性週刊誌在籍時に比べて、本当に時々)お話を聞かせてくれている方の口がどうしても重くなるようなことを語ってもらわなくてはならない時もあります。
でもそんな時でも「よりそう」姿勢は忘れずにがモットーです。

つまり、なにが言いたいかといいますと、「聞く」にもいろいろあるのです。
日常生活のなかであまり意識することがない「聞く」と変えると、いつも接している人、たとえば家族や恋人、友人などとの関係がちょっと変わるかもしれません。
そんな「聞き方」のひとつの方法が吉田豪さんの「聞き出す力」です。
最近まわりの人との関係にちょっと迷っている人は本書を読みながら、自分だけの「聞き出す力」について考えてみてはいかがでしょうか。

「聞く」とは直接関係ないのですが、本書の中に私がテレビを見なくなった理由のひとつが分かった気がしました。
テレビで求められるのはいつも「どこかで吉田さんが書いた(語った)話ばかり」だと吉田さんは書いています。
「最初から、どこかで聞いた話でよしとする」姿勢はきっとにじみ出るのです、いろいろなところに。