読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

BOOK014 『京都・東京 甘い架け橋』 甲斐みのり・奥野美穂子

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文筆家でLouleの主宰者でもある甲斐みのりさんと、京都にある喫茶店・六曜社のウェイトレス、奥野美穂子さんの二人が季節ごとに贈りあったお菓子と手のをやりとりをまとめた1冊。

メールにブログにTwitterち次々に登場するコミュニケーションツールのおかげで、今、この瞬間を誰かに伝えることは決して特別なことではなく、日常になっています。

その一方で、誰かに手紙を書く機会がどれだけ減ったことでしょう。

それ故に、二人の心のこもったやりとりはとても新鮮に映ります。

 

スーパーマーケットには冬でもトマトが(旬は夏)、夏でも大根が(旬は冬)が並び、ファッション以外の部部分で季節感や旬を感じる機会も少ない昨今です。

手紙とともに、二人が贈りあうお菓子から溢れる日本の四季の美しさに目を奪われました。

 

そしてページを閉じて気づかされるのです。

二人が贈りあっているのは、手紙やお菓子という“モノ”だけではないということに。

本書は贈りあったお菓子やそのお菓子を買うことができる店名が掲載された、一種のガイド本的要素が含まれているにものかかわらず、不思議なことにあまりカタログを見ているような気分にさせられることはありません。

それは、相手のことをたくさん考え、二人が重ねてきた歳月や、その間に起きたさまざまな出来事に思いを馳せながら贈り物を選んでいるので、単なる商品紹介の枠を超え、互いの気持ちが行き交う様が伝わってくるからでしょう。

贈っているのは、物ではなく気持ちだと伝わってくるからでしょう。

 

私の母は携帯電話が大の苦手でした。

「何かあったらメールしてね」と言い聞かせているけれど、メールが来ることは滅多にないのです。。

その代わり、母お手製の絵手紙が毎度、郵便受けに届けられていました。

そして、

「これくらいなら、メールくれればすぐ用件は済むのに……」

と思いながらハガキを読んで、手紙のお礼とその返事をメールで返してしまっていたことを、実はいま公開しています。

もともとは手紙好きだったのだから、他愛のない日々のことをお気に入りの便箋に綴って送っていたら、きっと忘れられない言葉が残ったり、母の気持ちにもっと触れられたりしたはずです。

 

そんな反省をいかして、いつもメールで済ませている友人にいきなり手紙を書いてみようかしら。

プレゼントを贈るのはちょっと照れくさいから、まずは手紙からはじめてみよう。

 

そんな気持ちにさせてくれる、あたたかな1冊です。