読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

クラフト・エヴィング商會のこと②

私とクラフト・エヴィング商會さんとのちょっとしたご縁について書いた
クラフト・エヴィング商會のこと」

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の続きを書こうと思います。

クラフト・エヴィング商會さんとお仕事をするために、文芸編集者になるぞ!と決意してから2年くらい経った頃、私は文芸編集部のある会社に転職。
そのころ、クラフト・エヴィング商會の出版物の文章をすべて書かれていた吉田篤弘さんは、ユニット・クラフト・エヴィング商會ではなく、
個人のお名前でエッセイや小説をたくさん出版するようになっていらっしゃいました。
「よし、これでお仕事ができる」
と喜び勇んで、文芸編集者として、吉田篤弘さんに連絡すると、体調を崩して、少しの間、書くことをお休みしている最中ということを知ったのです。
「体調が回復して、書くことを再開したら、必ずご連絡をします」

という言葉を信じ、回復を祈りながら待つことに……。

そして月日が経ち、私は文芸編集部から、週刊誌の編集部に異動することが決まりました。
ちょうどその頃のことでした。
吉田さんから
「ようやく一緒にお仕事ができるようになりました。一度お話しませんか?」
という連絡をいただいたのです。
先輩の計らいで、異動が決まっていた私も打ち合わせに参加させていただき、連載で小説を執筆してくださることになりました。

でも異動の決まった私が、その連載小説に関わることはできません。
連載された作品は書籍化されましたが、その過程にも私はまったく関わることはありませんでした。

その作品は『イッタイゼンタイ』。

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現在は文庫化もされているはずです。

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吉田さんは、打ち合わせのとき
「あなたからいちばん最初にもらった手紙に書かれていた小説のテーマを、時を経た今、僕はこんなふうに思う、を書く」

というようなことをおっしゃってくださいました。

とてもうれしい言葉。

それなのに単行本ができあがったとき当時の先輩が送ってくれたにもかかわらず、まだ読むことができていません。

クラフト・エヴィング商會とのちょっとしたご縁を思ったり、クラフト・エヴィング商會に対して抱いている自分の想いの強さを感じたりして、まだページを開けないのです。

クラフト・エヴィング商會と私のちょっとしたご縁のお話は、これでおしまい。
このお仕事を続けていたら、もしかしたらまたちょっとしたご縁が生まれるのかもしれません。
おしまいだけれど、おしまいじゃないかもしれない、不思議なご縁のお話でした。