BOOK009 『エプロンで過ごす毎日。』 高尾汀
ずっと自宅暮らしでお料理は母に任せきりだった私が、エプロンに目覚めたのは『暮しの手帖』で編集をすることになった頃です。
なぜなら『暮しの手帖』では、お料理ページの取材のときに編集さんもエプロンをつけて現場に臨むからです。
そして、料理ページは必ず会社にある台所でレシピどおりに作って、きちんとできあがるか試作をします。
そのときにも、もちろんエプロン。
たしか別冊には“エプロンさん”というキャラクター(実在の編集さんがモデル)も出てきたはずです。
そんな経緯もあって、お買い物中にエプロンが置いてあるお店を見つけると吸い寄せられていくようになりました。
そして気にいったものを見つけると買い集めるのが趣味のひとつになったのです。
著者の高尾汀さんはもともとお裁縫が好きで得意な主婦でした。
料理家のホルトハウス房子さんが、自分の教室に通ってきていた高尾さんの手づくり“三角エプロン”が気に入って、本書の出版をサポートしたといいます。
高尾さんのエプロンは、三角形に縫った布をふわっと腰のあたりで結ぶだけの楽ちんエプロン。
シンプルだからこそ、布選びや刺しゅう、ボタン飾りが思う存分楽しめそう。
本書には、ミシンがあったら使いきれないくらい作ってしまいそうなかわいいエプロンがたくさん出てきます。
そして、作り方だけではなくて、エプロンをつけて暮らすことの幸せを感じさせてくれるのも、うれしいところ。
お裁縫本の域を超えたライフスタイルブックだと、私は感じました。
私の記憶にある母は、ごはんの支度や掃除のために大好きな読書を中断せざるを得なくなり、ため息をつきながらエプロンをつけていたものでした。
エプロンをつけることが家事に引き戻されるような気がして、ちょっと気がめいってしまう、私の母ような人ほど読んでほしいと思います。
エプロンとともに暮らすことが、きっと今までよりちょっとだけ楽しくなるに違いありません。