読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

BOOK007  『聞き出す力』 吉田豪

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著者の吉田豪さんと言えば、アイドルやタレント、格闘家などにインタビューをしている「プロインタビュアー」。
その取材相手の数は1000人以上と言われています。
本書は、時に「本人よりも本人に詳しい」といわれる綿密な下調べをもとに構成する吉田さん流の取材を通じて、「今まで語られてない話を聞きだしたり」「誰も聞けない、本人も言いにくい話を聞きだしたり」してきたエピソードをつづっています。

「プロインタビュアー」とまでいかなくても、これでも一応、政治家、芸能人、文化人から市井の人々(90歳のおばあちゃまとか)まで取材をしてきた編集・執筆業を営む人間のはしくれとして、読んでおかなくちゃと思い手を伸ばしました。

インタビューにもいろいろあります。
本当にいろいろあるんだなぁ。

吉田さんのインタビューはきっと相手と闘っているのだと思います。
まさにタイトル通り「聞き出す力」を駆使する側と聞きだされて堪るかと思っている人間のせめぎ合い。

今でこそ女性のライフスタイルものを中心に編集、執筆をしている私ですが、ある時期、水着なんて当り前! 肌の露出が多いお姉さんたちのグラビアページがあるような男性週刊誌で記者をしていた時期もありました。
その時は、まさに

「他誌では話していない話を聞き出さなくちゃ」

「最近ちょっと騒がれたあのネタを振らなくちゃ」

というような取材ばかり。

そのたびに「人の話を聞くのはとても好きだけれど、こういうやり方は肌に合わないような気がする」と思っていたものでした。

そして私が行き着いたのが、いまの「おもしろがる」「よりそう」という聞き方。
もちろん、時には(男性週刊誌在籍時に比べて、本当に時々)お話を聞かせてくれている方の口がどうしても重くなるようなことを語ってもらわなくてはならない時もあります。
でもそんな時でも「よりそう」姿勢は忘れずにがモットーです。

つまり、なにが言いたいかといいますと、「聞く」にもいろいろあるのです。
日常生活のなかであまり意識することがない「聞く」と変えると、いつも接している人、たとえば家族や恋人、友人などとの関係がちょっと変わるかもしれません。
そんな「聞き方」のひとつの方法が吉田豪さんの「聞き出す力」です。
最近まわりの人との関係にちょっと迷っている人は本書を読みながら、自分だけの「聞き出す力」について考えてみてはいかがでしょうか。

「聞く」とは直接関係ないのですが、本書の中に私がテレビを見なくなった理由のひとつが分かった気がしました。
テレビで求められるのはいつも「どこかで吉田さんが書いた(語った)話ばかり」だと吉田さんは書いています。
「最初から、どこかで聞いた話でよしとする」姿勢はきっとにじみ出るのです、いろいろなところに。