WORDS001 捨てられない理由。
古い本には確かに何かがこもっている気がする。
読んだ人の思いだろうか。
そこに記された言葉にやどる力だろうか。
あるいは年月を経たものは、ただそれだけで魂のようなものを宿すのだろうか。
『九つの物語』橋本紡著より抜粋
私は、本を捨てるのがとても苦手。
これまで幾度かの引っ越しでも、一番問題になったのは本の多さでした。
編集者&ライターを職業にしていることに加え、紙の本という存在そのものに愛着を抱く性分なもので、内容に多少の不服があったとしてもなかなか手放すことができないのです。
だって、編集者として作家さんの執筆を近くで見てきて、そしてライターとして自分で原稿を書くようになって書くことがいかに大変な行いであるかを知っているのですもの。
自由に思いつくままを書いているかのようで、その内容には責任が伴います。
同じ赤と表現するにも書き手は、その赤がどんな赤なのかを伝えるためにあまたある言葉の中からしっくりくるものを選び出し、文章を練る。
そして、それらが積み重なって物語はできあがるのです。
そう思うと、試行錯誤と努力の結晶である本を粗末にしたら罰が当たるような気がしてまいます。
でも、残念ながらスペースは無限にあるわけではありません。
読書家にとって、本の所有とスペースの有限は生きるか死ぬかと同じくらい悩ましい問題といっても過言ではないのではないでしょうか。
そして、今日もまた積読の山に新たな本が仲間入りするのでした。