読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

BOOK005 『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』 柴崎友香

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実は、大学を卒業して間もないころにハードカバーで読んでいるこの本。

本屋さんで見かけて、なんとなく懐かしい気分にかられたので、再び手に取ることにしました。

 

この本に収録されているのは、2つの物語。

1つめは本のタイトルになっている“次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?”ですが、たくさんの思い出が詰まっているのはもう1つの物語のほうです。

タイトルは、“エブリバディ・ラブズ・サンシャイン”。

“エブリバディ・ラブズ・サンシャイン”の主人公は、眠ってばかりいる女性です。

大学にも行かずに、とにかく眠ってばかりいます。

その理由は、「失恋」。

 

この本をはじめて読んだころの私は、やりたい仕事に就くこともできず、彼氏に振られたばかりでした。

そして、“エブリバディ・ラブズ・サンシャイン”の主人公と同じように、眠ってばかりいたのです。

母親によく「なんだか冬眠してる、小動物みたい」と言われたこともありました。

やりたい仕事につけない自分、好きだった人に振られた事実を、本の中に迷い込むことでやり過ごす日々。

現実と物語を間をふわふわと浮遊しながら、心にかさぶたを作っていたのです。

そんな理由で、思い入れのある本なのでした。

 

柴崎友香さんの作品を読むといつも、“ささやかな日常”を大事にしたくなります。

大きな事件は起きなくても、平凡でも、それでもそこにはちゃんと幸せの種みたいなものはあって、それを見つけ育てていくのって、それこ幸福なことなのかもしれない、と思わせてくれるのです。

あたたかくて、おだやかな気持ちになりたいとき、おススメの1冊。