BOOK004 『初恋Book』 初恋委員会編
初恋、と言えば、島崎藤村の“まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき~”が思い浮かぶ私人も多い(少なくとも、私はそう)と思いますが、本書はまったく島崎藤村とは関係ありません。
2009年の4月に行われた『初恋展』という展示をもとにしててまとめられた1冊で、43人のアーティストが“初恋”をテーマにした詩や文章、イラストなどを提供しています。
ページをめくるたびにさまざまな“初恋”に触れることができて、うきうきした心持ちになる1冊なのです。
読みながら「じゃあ、私の初恋はいつだったのかしら」と考えてみて、そもそも“初恋”って定義がとても難しいな、とはたと思い至りました。
「男の子」の存在を意識した、幼稚園、小学生くらいで抱く、ほのかな、そしてあたたかな想いを“初恋”とするのか。
それとも、誰かのことを自分と同じくらい、いいえ自分のこと以上に大事に愛おしく思うほどの強く、確固たる感情を初恋というのか。
どちらを初恋と定義するかによって、話は大きく異なります。
この2種以外にも、いろいろな想いがこの世にはあるのですから。
だから、そういう意味で人は、何度も初恋を経験する生き物なのかもしれません。
そして本当なら、恋に落ちるたびに初恋のようなキラキラとした想いを抱くことができればいいのだけれど、残念ながらそうはいかないのも哀しいところ。
恋を積み重ねれば積み重ねるほど「もう傷つくのはイヤ」なんてことを思ってしまって、純粋に相手のことだけを思えなくなったり、自分を大事にしすぎて憶病になりすぎてしまったりするものです。
私は恋を積み重ねるたびに、恋愛が苦手になっていく気がしてしょうがありません。
これまでの恋に思いを馳せながら、これから出会う相手を夢みながら、読んでみるのも一興です。