読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

花森安治さんの 実用文十訓

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NHKの朝の連続テレビ小説とと姉ちゃん」が今日最終回を迎えたようです。

私は、一度も見ませんでした。

理由は「とと姉ちゃん」のモデルになった、『暮しの手帖』の大橋鎭子さんのことを知っていたので、そのイメージが壊れてしまう気がして、ちょっと怖かったから。

 

私は数年前まで『暮しの手帖』で編集者をしていました。

大橋鎮子さんはみんなから「しずこさん」と呼ばれていて、編集部のある3階まで自らの足で上がっていらっしゃって(暮し手帖社は3階建てなのですが、エレベーターはないのです)、よくみんなとお話をしていたものです。

 

私が初めて長めの文章を書くようになったのは、

もうかれこれ10年近く前、男性週刊誌の記者をしていた時のことでした。
それまでは、文芸書籍の編集の仕事をしていたので
文庫の裏にある“あらすじ”や本の帯の“コピー”程度。

まともに取材なんてしなことないのに政治家、芸能人、大学の先生……など
いろんな方にお話を聞き記事にまとめるのは、

大変だけれどやってみると楽しくて、私は「書く」ことにのめり込んでいきました。

週刊という短いスパンではなくて、話を聞くこと、書くことと、
もっとじっくり向き合いたいなと思って移ったのが『暮しの手帖』編集部です。
ここで書いた文章が、今でも私のベースになっています。


暮しの手帖を辞めて、フリーランスになってから
自分の文書についてあれこれ考えていたときに出合ったのが、
花森安治が唱えた実用文十訓”
(ご存じの方も多いでしょうが、花森安治さんとは『暮しの手帖』の創刊者です)。

その十訓というのが、こちら。

花森安治が唱えた実用文十訓
1 やさしい言葉で書く
2 外来語を避ける
3 目に見えるように表現する
4 短く書く
5 余韻を残す
6 大事なことは繰り返す
7 頭でなく、心に訴える
8 説得しようとしない(理詰めで話をすすめない)
9 自己満足をしない
10 一人のために書く
(『私の岩波物語』山本夏彦著より引用)

この10個ひとつひとつに対する私なりの思いを、ここで語ることもできます。
でも、敢えてしません。語らなくても、伝わる力がこの10カ条にはあると思うから。
実用文だけじゃなく、どんなものを書くにも当てはまることであり、
「書く」だけではなくて、人と向かい合うときに大切にしたいこと10個でもあるように私は思います。

いつも、どんなときでも“花森安治の10カ条”を胸に……。