読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

いつかのお買い上げ本。

仕事を調整して、早めの年末年始休暇をとった昨年。

お休みの間にたくさん本を読むぞ! という固い決意のもと、本屋さんに行っては本をあれこれ買い込んだのでした。

 

「そのうち、どれだけの本を読んだの?」

とか

積読の山は、少しでも低くなったの?」

なんて聞かないでください。

だって、結果は!  みなさん、おわかりでしょう?

 

あれこれ買った本のなかの、2冊がこちらです。

 


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この2冊は、どちらも本屋さんで買ったものではありません。

恵比寿にあるギャラリー、LIBRAIRIE6 / シス書店で購入しました。

美人オーナーの佐々木聖さんとは、ひょんな縁から知り合って気になる展示があると足を運んでいる、お気に入りの場所です。

自分はシュルレアリスムが好きなことに気づかせてくれたのは、ここLIBRAIRIE6 / シス書店であり、佐々木聖さんでした。

訪れたときは 「山尾悠子 歌集『角砂糖の日』出版記念展 + 合田佐和子/ まりの・るうにい/山下陽子展 」の会期中。

山下陽子さんは私のとても大好きな銅版画家さんで、展示はなるべく見に行くようにしているのです。

 

そして、もうひとつの目的は、 山尾悠子さんの 歌集『角砂糖の日』を買うためです。

この『角砂糖の日』の版元は、LIBRAIRIE6 / シス書店。

1982年に刊行され、絶版、幻になりかけた小説家・山尾悠子さんの歌集を新装版として復刊させたのです

「書店というからには、いつか本を出してみたかったの」

という女主人の言葉が耳に残っています。

そして、金子國義さんの本も関連展示をLIBRAIRIE6 / シス書店で行ったという縁の1冊なのでした。

 

というわけで、いつかのお買い上げ本。

⚫『金子國義スタイルブック』 金子修・岡部光 編著  アートダイバー

⚫『角砂糖の日』山尾悠子  LIBRAIRIE6 / シス書店

でした。

 

本屋さんで出会う本。

本屋さんじゃない場所で出会う本。

どちらの出会いも、素敵なものです。

BOOK014 『京都・東京 甘い架け橋』 甲斐みのり・奥野美穂子

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文筆家でLouleの主宰者でもある甲斐みのりさんと、京都にある喫茶店・六曜社のウェイトレス、奥野美穂子さんの二人が季節ごとに贈りあったお菓子と手のをやりとりをまとめた1冊。

メールにブログにTwitterち次々に登場するコミュニケーションツールのおかげで、今、この瞬間を誰かに伝えることは決して特別なことではなく、日常になっています。

その一方で、誰かに手紙を書く機会がどれだけ減ったことでしょう。

それ故に、二人の心のこもったやりとりはとても新鮮に映ります。

 

スーパーマーケットには冬でもトマトが(旬は夏)、夏でも大根が(旬は冬)が並び、ファッション以外の部部分で季節感や旬を感じる機会も少ない昨今です。

手紙とともに、二人が贈りあうお菓子から溢れる日本の四季の美しさに目を奪われました。

 

そしてページを閉じて気づかされるのです。

二人が贈りあっているのは、手紙やお菓子という“モノ”だけではないということに。

本書は贈りあったお菓子やそのお菓子を買うことができる店名が掲載された、一種のガイド本的要素が含まれているにものかかわらず、不思議なことにあまりカタログを見ているような気分にさせられることはありません。

それは、相手のことをたくさん考え、二人が重ねてきた歳月や、その間に起きたさまざまな出来事に思いを馳せながら贈り物を選んでいるので、単なる商品紹介の枠を超え、互いの気持ちが行き交う様が伝わってくるからでしょう。

贈っているのは、物ではなく気持ちだと伝わってくるからでしょう。

 

私の母は携帯電話が大の苦手でした。

「何かあったらメールしてね」と言い聞かせているけれど、メールが来ることは滅多にないのです。。

その代わり、母お手製の絵手紙が毎度、郵便受けに届けられていました。

そして、

「これくらいなら、メールくれればすぐ用件は済むのに……」

と思いながらハガキを読んで、手紙のお礼とその返事をメールで返してしまっていたことを、実はいま公開しています。

もともとは手紙好きだったのだから、他愛のない日々のことをお気に入りの便箋に綴って送っていたら、きっと忘れられない言葉が残ったり、母の気持ちにもっと触れられたりしたはずです。

 

そんな反省をいかして、いつもメールで済ませている友人にいきなり手紙を書いてみようかしら。

プレゼントを贈るのはちょっと照れくさいから、まずは手紙からはじめてみよう。

 

そんな気持ちにさせてくれる、あたたかな1冊です。

 

BOOK013 『 ちょっと具合のわるいときの食事』 日野原重明 東畑朝子

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つい数時間前に、いまはインプットの時期だからブログの更新はしませんと書いたばかりですが、舌の根も乾かぬうちに本を1冊ご紹介です。

 

あの、日野原重明先生監修の『 ちょっと具合のわるいときの食事』です。

 

世間のお休みと関係なく、今日も、明日も、明後日も、お正月だってお仕事なのに、恋人が風邪をひいたので、久しぶりに引っ張り出しました。

名前もそのままズバリの“風邪退治鍋”というメニューを発見。
白菜と豚バラというシンプルな具材に、ニンニクと生姜がたっぷり入った元気の出そうなレシピです。
つぎの休みのごはんは、これに決定。

 

風邪以外にも、食欲がないとき、胃痛・吐き気のある人のために、疲れやすい、眠れないなど、いろいろな“ちょっと具合が悪い”に応えてくれるレシピが満載です。

具合が悪いときというと、消化の良さ優先で味気ないごはんを食べてきた記憶ばかりの私には、目から鱗。

チーズ雑炊、とうふグラタン、お麩の卵とじ、玉ねぎのたらこ和え、焼きバナナetc…元気なときでもぜひ食べたいメニューばかりが並びます。


1985年刊行の本ということもあって、ちょっと懐かしい雰囲気の写真もたまりません。

 

この本のことを教えてくれた、雑食「nid」のライター仕事で取材した、某羊毛作家さんに感謝です。

 

一家に一冊、救急箱代わりに持っていると、きっと重宝するはず。

いまはインプットの時期。

相変わらず本も買っているし、読んでもいます。

通年より早めに年末年始のお休みをいただいたので、時間もゆるりと流れています。

 

でも、ブログの更新はしていません。

 

なぜなら、いまはインプットの時期だと感じているからです。

 

どちらかというと私は、計画的に言葉を積み上げるよりも、溢れ出てくる感情や思考を捕まえるように言葉を使うタイプ(お仕事で書いている言葉は(もちろんきちんと計画的に積み上げる努力をしているつもり)。

だから、溢れ出てしまうと、もう1度心やアタマ、カラダに喜びや怒り、悲しみなど色とりどりの想いや思考が溜まるまで、言葉がからっぽになってしまうようなのです。

 

想いや思考の素になるインプットは、とても大切な時間です。

いまは、溢れ出る自分を作る時期。

 

WORDS009 最も効果的な復讐の方法とは。

君の幸せだけが、君に起きたいろんなことに対する復讐なんだ。

 『彼女について』よしもとばなな より抜粋

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よしもとばななさんの小説のなかで、このフレーズが登場するのは重みのあるシーンなのだけれど、程度の差こそあれ、私のような人間にだって、復讐心が芽生えることある。

たとえば、

仕事で、すっごくムカつく上司とうまくいかなくなて、異動になった。

どうしようもない男に、どうしようもない振られ方をした。

一緒に合コンに行った後輩が、どうやら私の狙っていた男を落としたらしい。

なんて、時に……。

 

どうしたら、あいつに、あの人に、いやな思いをさせられるか。

人間ですもの、そんな負の感覚にとらわれることだって、あるわけです。

しばらくの間、復讐心を心の中でフツフツと湧きあがらせていると、ふとそこから自由になれる瞬間がきます。

 

そして、

異動になった部署で、成績上げて、部から追い出しことを後悔させてやる。

どうしようもない男と再会した時に、いい男を連れてて、最高の笑顔を見せてやる。

今度一緒になった合コンでは、私がいい男を落としてやる。

 

というように、相手に対して何かを「する」のではなくて、自分自身の行動で状況を変えてみせるとポジティブに考えられるようになるもの。

ここまでくれば、復習はなかば完了したも同然です。

 

あとは、本当に自分の行動で状況を変えて、幸せになっちゃえばいい。

復讐対象が羨むくらいの自分になってしまえばいいのです。

 

BOOK012 『布じまん』 大谷マキ

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会社に置かれた「ご自由にお持ちください」箱に入れられていたのが目に入って、持って帰ってきた1冊です。

この「布じまん」はお裁縫の本でも、刺繍の本でもありません。

暮らしの中の1シーンで使われている布、布のある光景が切り取られた写真が、ただひたすら集められているだけです。

だから、ちくちくと針仕事をしたいとか、刺繍の図案が……という方は別の本を手にとったほうがいいでしょう。

実用書というよりも、ビジュアル書と言ったほうがしっくりきます。

お裁縫を趣味にしているわけではなく、特に布好きというわけでもない私が、どうして、タイトルをみただけでこの本を持ち帰ってきたのか。

自分でもよく分からないままページを開きました。

読了してみると、なんとなくその理由がわかったような気がしました。

 

私にとって布は、そのまま母親との思い出につながります。

実家で家族や愛犬とのんびり過ごししたいと思いながらも、仕事が立て込んでバタバタしていているとそうも言っていられません。

そんな時でも、この本を開けば母といるときの安心感を得られるような気がしました。

 

母が作ったお洋服ばかりを着ていた私のなかで、印象に残っている母の姿は、台所に立っているか、お裁縫をしているかのどちらかです。

パッチワークを趣味としていた母。

家のなかはいつも布であふれていたし、型紙に合わせて切り取った布の端切れがあちこちで小さな山を作っていました。

その端切れを空高く投げ上げ、糸巻きの糸を転がしてたりして遊んでは、母に

「まったく、あなたは何をやっているの!」

と怒られたものでした。

 

もういい年なので、ちょっと嫌なことがあったくらいじゃ、

「ねえ、お母さん」

なんて甘えるのは格好が悪いような気がしてなかなかできません。

だからこそ、幼い頃の母との記憶を呼び起こしてくれるこの本は、なにかあったときの特効薬になりそうです。

布と本をおもちゃにしていたは、今こうして布の本に救われて、もうひと頑張りしようとしているのだから不思議なものです。

 

廃棄される直前だったこの本と、「ご自由にお持ちください」箱で出会ったのも、なんだか不思議な縁のように思えて仕方がないのでした。

今日のお買い上げ本。

今年の仕事の山を越えたので、

「本を読むのだー!」

「本が読めるぞー!」

と、読書欲とお買い上げ熱でぐつぐつと煮立ったようになりながら本屋さんへ。

 

そして買ったのが、こちらです。
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⚫「つるとはな 4号」

「クウネル」リニューアル後、唯一、毎号購入している雑誌です。

編集長の岡戸絹枝さんと、いつかお仕事をご一緒するのが私の目標。

岡戸さんが編集長をしている雑誌で、ライターとして原稿を書くんだ、いつか、絶対。

いろいろな形があって、たとえそれがどんな形でも、暮らしとは、人生とは愛おしいものである。

今号も、きっとそう思わせてくれるに違いありません。

 

⚫『贅沢貧乏のお洒落帖』森茉莉  ちくま文庫

あの森茉莉さんが綴ったお洒落のエッセイを、フリー編集者の早川茉莉さんが集めて編んだ1冊。

あとがきは黒柳徹子さんだというのですから、なんとも贅沢です。

早川茉莉さんが編集したアンソロジーはこれまで何冊か読んでいますが、そのセンスのよさにいつもうっとりさせられます。

この本もきっと、期待を裏切らないでしょう。

 

⚫『鳥の巣』 シャーリィ・ジャクソン  国書刊行会

先日は文庫の新刊を買ったシャーリィ・ジャクソン。

こちらは多重人格小説だとか。

一気に読み終えたいから、年末年始休暇中の本に決定です。

 

⚫『本の時間を届けます』

篠賀典子  芹沢健介  北條一浩  洋泉社

昔、『女子の古本屋』という本がありました。

岡崎武さんが、古本屋稼業に足を踏み入れた女性をルポするといった内容で、当時の古本屋業界において女性が珍しいという背景もあって出版されたものでした。

いまや古本屋業界、書店業界ともに、女性の存在は決して珍しくはありません。

だからこそ、個性というか、覚悟や想い、こだわりがないと生き残っていけなくなってきているようです。

本が好きだから、本で暮らすことを選んだ、今の女性たちを取り上げた本。

同じように、編集、執筆という立場から、本で暮らすことを選んだ私は避けて通るわけにいかないのです。

 

⚫『ふたりから ひとり』

つばた英子 つばたしゅういち  自然食通信社

『ときをためる暮らし』で、時の流れや自然の変化を受け止めながら、自給自足で、手間ひまを楽しむ暮らしを綴ったつばたさん夫婦。

夫であるしゅういちさんが亡くなっても、暮らしは続いていく、いいえ、続いていってしまう。

生きることと真剣に向き合う人だけが、語ることを許される言葉がギュッと詰まっているはず。

 

⚫『花森安治の従軍手帖』 土井藍生  幻戯書房

暮しの手帖」の編集長だった花森さんは戦時中に国策広告を作っていたことを後悔していたそうです。

「戦争中の暮しの記録」という本も出しています。

二度の従軍と大政翼賛会宣伝部時代に書き残した手帳などから集めた言葉と図版集。

花森さんのルーツが知りたくて、手に取りました。

 

以上、6冊をお買い上げ、です。