読書する女

本を読むこと以外、すべてのことを放棄してしまいたいエディター&ライター、Aliceによる本の話、日々のこと。

BOOK010 『雪だるまの雪子ちゃん』 江國香織

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54年ぶりに11月の東京に雪が降る、というニュースを聞き、読み返しました。

人が積もった雪で作ったた“人工的”な雪だるまではなく、“野生”の雪だるまの女の子、雪子ちゃんを主人公にしたお話です。

冒頭に出てくるこの野生の雪だるまという言葉に、読むたびにめろめろになってしまいます。

だって、雪だるまに、野生だなんて。

その着想、すごいと思いませんか?

 

野生の雪だるまの女の子が主人公なのはもとより、江國香織さんの筆致や山本容子さんの銅版画が相まって、全体としては絵本のような雰囲気。

でも、私にはこの本が子供向けの絵本のようには思えません。

なぜなら、四季や人間の生活を見つめる雪子ちゃんのまなざしは、子どもが大人の世界を見るそれととても似通っていて、大人である私たちこそ改めて気づかされることばかりだからです。

大人のお手本みたいな位置づけとして登場する、雪子ちゃんの一番親しい友人であり隣人の百合子さんを見る雪子ちゃんのまなざし、そして二人のやりとりは、身につまされます。

 

今日の雪はどうやら積もらないようですね。

この冬、あと何度雪が降るかわかりませんが、そのたびごとに読み直すことになる予感。

今日のいただき本。

お手伝いしている某女性誌の編集部には、書評ページに取り上げてもらおうといろいろな出版社から大量の本が送られてきます。

残念ながら書評で取り上げられなかった本は、

「ご自由にお持ちください」

というメモ紙の貼られた段ボール箱に入れられ、定期的に放出されるのが慣例です。

 

いつもスタートダッシュに乗り遅れて、お目当てのほんは誰かの手に渡ってしまうのですが、残りものには福があるもの。
今回の放出では、この2冊をいただきました。

 
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お金を出してかったものではありませんが、積ん読に仲間入りということで、今日のいただき本として記事にすることにしました。

 

⚫『グレース・ケリー モナコ公妃のファッションブック』青幻舎

美しきモナコ公国のプリンセス、グレース・ケリーのファッション、お気に入りのブランドや愛用のアクセサリーなどをカラー写真満載で紹介。

オードリー・ヘップバーンはじめ、品があってもとびきり美しく、どこかチャーミングな女性に惹かれる私にとって、グレース・ケリーは憧れです。

眼福な1冊。

 

⚫『魔女の12ヵ月』 飯島都陽子  山と渓谷社

別に魔女になりたいと思っているわけではありません。

ラベンダーの砂糖漬けやホタテのスパゲティ、パンプキンスープなどなど、おいしそうなレシピが載っているようだったので、レシピ本として勝つようするつもり。

 

 

クラフト・エヴィング商會のこと②

私とクラフト・エヴィング商會さんとのちょっとしたご縁について書いた
クラフト・エヴィング商會のこと」

woman-reading.hatenadiary.jp


の続きを書こうと思います。

クラフト・エヴィング商會さんとお仕事をするために、文芸編集者になるぞ!と決意してから2年くらい経った頃、私は文芸編集部のある会社に転職。
そのころ、クラフト・エヴィング商會の出版物の文章をすべて書かれていた吉田篤弘さんは、ユニット・クラフト・エヴィング商會ではなく、
個人のお名前でエッセイや小説をたくさん出版するようになっていらっしゃいました。
「よし、これでお仕事ができる」
と喜び勇んで、文芸編集者として、吉田篤弘さんに連絡すると、体調を崩して、少しの間、書くことをお休みしている最中ということを知ったのです。
「体調が回復して、書くことを再開したら、必ずご連絡をします」

という言葉を信じ、回復を祈りながら待つことに……。

そして月日が経ち、私は文芸編集部から、週刊誌の編集部に異動することが決まりました。
ちょうどその頃のことでした。
吉田さんから
「ようやく一緒にお仕事ができるようになりました。一度お話しませんか?」
という連絡をいただいたのです。
先輩の計らいで、異動が決まっていた私も打ち合わせに参加させていただき、連載で小説を執筆してくださることになりました。

でも異動の決まった私が、その連載小説に関わることはできません。
連載された作品は書籍化されましたが、その過程にも私はまったく関わることはありませんでした。

その作品は『イッタイゼンタイ』。

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現在は文庫化もされているはずです。

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吉田さんは、打ち合わせのとき
「あなたからいちばん最初にもらった手紙に書かれていた小説のテーマを、時を経た今、僕はこんなふうに思う、を書く」

というようなことをおっしゃってくださいました。

とてもうれしい言葉。

それなのに単行本ができあがったとき当時の先輩が送ってくれたにもかかわらず、まだ読むことができていません。

クラフト・エヴィング商會とのちょっとしたご縁を思ったり、クラフト・エヴィング商會に対して抱いている自分の想いの強さを感じたりして、まだページを開けないのです。

クラフト・エヴィング商會と私のちょっとしたご縁のお話は、これでおしまい。
このお仕事を続けていたら、もしかしたらまたちょっとしたご縁が生まれるのかもしれません。
おしまいだけれど、おしまいじゃないかもしれない、不思議なご縁のお話でした。

 

 

WORDS007 愛するほどに、苦しくなる。

人ときちんと向き合いたいと思えば思うほど、執着ばかりが深まって、私はどこかおかしくなってしまう。

愛情ではなく、憎しみばかりを育ててしまう。

    『長い予感』 小川内初枝著より

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愛情と憎しみは裏返し、なんてことよく言われる言葉だけれど、愛すれば愛するほど、寛容でありたいと切望する自分とは裏腹に、すべてを自分のものにしたい束縛の強さを発揮してしまったりします

私はこんなに想っているのに……、そう思えば思うほど、心の中は自分のものになりきらない相手に対し憎しみにも近い感情を抱いてしまうこともあるのです。

束縛を窮屈だと感じた相手もまたいつしか、私に憎しみに似た思いを抱くようになるでしょう。

ただ、好きなだけなのに。

好きだから、失いたくないだけなのに。

今日のお買い上げ本。

 

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ライターの雨宮まみさんが亡くなったのが、数日前。

Twitterのタイムラインが、彼女の死に絶望し、悲嘆にくれる様子を追いかけながら、いままで手にしたことのなかったその著作を買ってみようと思いました。

というわけで、本日のお買い上げ本です。

 

●『女子をこじさらせて』雨宮まみ 幻冬舎文庫アマゾンなどのネット書店は軒並み在庫なしになっていて、ふらりと立ち寄った自宅最寄り駅近くにある小さな本屋さんで見つけました。

すぐに読みはじめたら止まらなくなって、もうそろそろ読了しそうな勢い。

手に取るきっかけがその死というのは皮肉なものだけれど、雨宮さんの言葉に触れることができてよかった。

心から、そう思っています。

 

今日のお買い上げ本。


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お仕事資料のなかには、もうすでに絶版になっているものもよくあります。

そんなときは古書の検索サイト「日本の古本屋」やAmazonマーケットプレイスなどで大捜索。

今回の本はそんなに古い本ではないので、すぐに見つかりました。

仕事の資料だけではなく、趣味で読む本もこしょはよく買い求めております。

 

というわけで、今日のお買い上げ本。

⚫『 大仏をめぐろう』坂原弘康  イーストプレス

奈良の大仏様や鎌倉の大仏様のような歴史ある由緒正しきものはもちろんのこと、個人の方が作ったハンドメイド大仏まで個性溢れる面々が紹介されています。

いま大仏にまつわる雑誌記事の企画、編集、執筆をしているので、資料として必要でした。

パラパラ読みをした印象では、新たな大仏様の楽しみ方を開眼させてくれそうな内容で、プライベートでも楽しめそう。

WORD006 終わることでしか救われない恋がある。

終わることが最悪ではない恋もある。

『恋ばっかりもしてられない』佐藤真由美著より

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別れたくない恋人との恋を終えなければいけなくなったとき、「なんて悲しいんだろう」と人は思い、人生のどん底に突き落とされたような気分になるものです。

でも、どんなない終わらせたくないと心が思っていても、別れることでしか救われない恋もあります。

 

私もそんな恋をしていたことがありました。

 

不倫でも、二股をかけられていたわけでもなかったけれど、私と彼の間にはとても大きな問題が存在していたのです。

私は彼のことが大好きだったし、おそらく彼も私が彼に抱いていた好意以上の気持ちで私を想っていてくれました。

ところが、大好きだからこそ二人の関係は窮屈になりすぎて、二人の世界以外の世界を、私たちは失いかけてるまでに……。

それで幸せかというとそんなことはまったくなく、地獄のような日々を送っていました。

本当に、大げさではなく、あれは地獄というよりほかない日々でした。

 

それなのに、どうしても“別れる”という選択肢を選ぶことができずにいた私たち。

そんななか、先に逃げ出したのは私でした。

大好きでどうしようもなかったけれど、二人でいることが二人にとって、そして二人のことを大切に思ってくれているまわりに人たちにとって、幸せをもたらさないという事実に耐えきれなくなってしまったのが、その理由。

逃げ出した私は、彼を失ったこと、しかも自ら終止符を打ったことに絶望しました。

でもその反面、これで自由になれるとほっとしている自分もいたのです。

終わることよりも、一緒にいることが、そしてじわりじわありと別れに向かっていく過程のほうが辛い恋があることを、その時の私は初めて知ったのでした。

 

そして私は、新しい私をスタートさせることに。

だから、今の私があるのです。

終わったからこそ私も彼も救われた。

だから、あれでよかったんです、私たちは、きっと。